【COLUMN】2024マレーシアラウンド
マレーシア・セパンサーキット
アジア選手権の中で一番好きなのがこのセパンのレース。
コースレイアウト自体はホンダ車向きとは言い難いけど、とにかく空港から近いしホテルも居心地がいい。問題と言えば酒類が無い事かな?特に年配メカニックのT山にとっては大問題みたいで(T山は夕方アルコールが切れると、とたんに歯切れが悪くなる)地元のハフィスに買い出しを頼んで、アルコール燃料で動いている “オッフェンハウザー”か?(ゴメンちょっと古すぎたかも?)いや、T山はそう言う年式なのだ。(笑)
ASB1000のメカニックはもう一人タイのレジェンドメカでスティ。通称バニー。長い事GPマシンを転がしていたから知っている人も多いと思う。二人の年齢は合わせて優に100を超える。20歳を超えて1年ぐらいの勇輝を、ジジイ二人が懸命にメンテナンスする。何とも言えないバランスなんだ。
ASBに比べるとだいぶ若くなるのがAP250チーム。ライダーはJAKOBで19歳。メカ二人はDAVIDとAYZAC。DAVIDは台湾から参加しているメカニックで、俺とは10年以上前からの知り合いらしい?実際にその当時の証拠写真も見せてくれた。真面目を絵に描いたような性格で、T山のように指定燃料は無い。Ayzacは典型的?なフィリピン人で、結構なお調子モン。ただ酒ならほっとけばいつまでも飲んでるタイプ(笑)実戦ではDAVIDの補佐に回り、同じフィリピン人のライダーの話相手に役立っている。
バックサイドには大木崇行。ご存じテレメトリー担当で、口癖は「腹減った」「ちょっと吸煙に」以前は俺も吸煙仲間だったけど脱退して久しいから、仲間探しに苦戦している。
タイヤメカニックのハフィス、ロジスティック担当のAKAI。この二人が居なくなったらウチのチームはヤバイ、右往左往するのは間違いない。そしてそれらの元締め?はロドニー。彼は元ブンシュウホンダチームで、その後アジアドリームカップのマネージメント。それから時を経て我々のチーム運営に携わっている。普段は物静かな感じだがエキサイトした時のロドニーは凄い!通称コブラトーク。早口で、何を言っているのか全く解らない。
俺がこのロドニーと出会ったのは15年位前かな?タイのヴィラサーキット(パタヤサーキット)で合宿しているときに、いきなり「私はロドニー・ペーと言います。私はレースをやりたいので教えて下さい」と言ってきた。アジアのサーキットでは良くあるパターンで、日本人が珍しいのか4メーカーのお膝元にいる我々を利用したいのか、声を掛けて来る奴は多いので、「ハイ分かりました、頑張って下さい、お手伝いしますよ」適当に答えたら「名刺下さい、後で連絡しますので」人のつながりは判らない。今では正真正銘のチームマネージャーになってしまった。(笑)
そんなメンバー達と戦ったセパンラウンド。今回から復帰したAP250のJAKOBは初めてに等しいコースとチームメンバー、タイヤ、バイク何もかもが分からずじまいで、あっという間にウイークが終わってしまったのだろう。「大丈夫、みんな初めはそんなものだ、ステップバイステップだよ」俺の数少ない英語単語を駆使して慰めた。
対して國井勇輝。やってくれた。Wウインは初めてだね。レース1では完璧な展開で勝利をおさめたけど、ライバル達も黙ってはいないから安心は出来ない。レース2では案の定、違う展開に持ち込まれそうになった。
しかし、俺が感心したのはそこからだ。地元で張り切り(応援団もスタンドで陣取っていて通り過ぎる度に凄い応援)絶対負けられないハフィス・シャリーン。もう一人のベテラン アズラン・シャーも侮れない。果敢に攻めて来る二人をかわしながら、無駄にタイヤを消耗させない走りを実践し、トップに立つと一気にスパートして心を折れさせる。(強くなったモンだ)昨年は遥希が獲れなかったトップを2回。見事にリベンジしてくれた。
先日の全日本でもレース2で勝ち、ランキングトップを死守した國井勇輝はアジア選手権でも2連勝でランキングトップに立った。(TVSのワンメークレースでチャンピオンになった尾野も全日本のGP3で獲れば二人揃ってWチャンピオン誕生だね)最終戦のブリラムが正真正銘の勝負所になるな。
レース2が終わり、休む間もなくパッキング、そのまま空港へ行き夜行便で帰途に就いた。
全日本チームは岡山テストがあるので火曜日の朝5時出発と一斉メールがあった。
笑ったのはオッフェンハウザーT山。「すいません寝坊しました、自走で行きます」何だ?
「出発は明日の朝5時ですよ~、まだ時間たくさんありますよT山さん」貴方、今日の朝5時は、まだ九州上空で機内にいたでしょう?(笑) ウン、やっぱりアルコール燃料切れると?(笑)
photo:asiaroadracing.com