【COLUMN】鈴鹿8耐テストからアジア選手権もてぎ

 

今年も8耐テストの時期になってきた。今回のテストには最初から3人全員揃う珍しいテストになったが、ライダー達のコンディションは必ずしも良くは無かったようで、特に浦本修充は寝不足に弱く(昔から変わらない)まっ白い顔で「大丈夫です」口では言うけど身体は正直、転ばないように走るので精一杯?だった。

もう一人の遠征?組マリオ・アジ。インドネシアの若手で、チームアジアからモト2にエントリーしている若手ライダー。マリオがアジア選手権に参加し始めた頃(アストラホンダチーム)サポートしていた関係で初めて会った。その時は転んで肩を脱臼?したが本人は走るというのでテーピングを施してやった記憶がある。

「おお、マリオ俺の事覚えているか?」マリオ「もちろんです、忘れない」ははは、痛い思い出は忘れないものなんだね。

 

今年の8耐はこの二人とチームの若手No,1の國井勇輝で戦う事になったんだ。チームの長老?は“里子”に出ました。(苦笑)

鈴鹿と云えばサーキットの活動と共に夜の楽しみ?がある。「夜ご飯どうする?」俺が聞いたらナオとマリオは「ご飯よりも寝たいです」言う。残りの一人は食いしん坊の勇輝「しんちゃん、行きたいです」しんちゃんは平田町の焼肉やホルモン、珍しく生肉も食わせる店で

大概美味い。小さい店なので予約しておく「4人位でいつもの席お願いね」いつもの席というのは店の外、わずかなスペースを活用したアウトドアシーティング。店の中は煙いから俺は外のシートが大好き。同席はご存じ鈴鹿の浩ちゃん(笑)

心行くまで美味い肉をたらふく詰め込んだ勇輝、終始ニコニコ顔だったね。

 

俺は今回のテストに勇輝を乗せるのには否定的だった。何故なら週末にはもてぎのアジア選手権があるから、キャラクターの違うマシン・タイヤを覚えさせたくなかったんだ。

バイクに乗せない代わりに夜ご飯は勇輝の希望で回らないお寿司屋との事で、ご存じ寿司安。ここでも一人で美味い寿司をたらふく食った勇輝に思いがけない朗報が「お前今度のレースで勝ったら小遣いやるぞ」寿司は食うは賞金の約束はするは、勇輝にとって夢のような夕食の時間だったね。

二日目のテストではナオとマリオが積極的に周回をこなしたが、最後に「会長、やっぱり乗っておきたいです」勇輝の直談判があり「チョットだけよ」許してやった。(笑)

テストが終わって片づけも早々に俺達はもてぎに直行した。メンバーは光太郎代表と俺、ドライバーは、今や日本のデータロガーの製作を一手に担う?OOKIエンジニアリングの代表大木崇行、この男以前はハルクプロで走っていたがその後御徒町の方から引っ張られフラフラと。(笑)その間もロガーの製作に没頭し、とうとう前述のように日本のロードレース界で確固たるポジションを確立しつつある。バイクのセッティングの話になると、まあ、長い。長い話の中からヒントを得ていくタイプの近年珍しい“職人”なんだ。三人寄れば文殊の知恵?なんて事も無く、だらだらと話を続けているうちに宇都宮に到着。約5時間の車中、俺は15分?くらい気を失っていたけど、楽しい会話のせいでビックリするくらい短く感じた移動時間だったな。

 

アジア選手権(ARRC)は過去に鈴鹿・オートポリス・菅生と場所を変えて開催されてきたが、今年はもてぎ。このARRC、観客の入場料無料なんだ。日本を始めアジアのトップライダーの走りが見られ、日本では行われていないアンダーボーンのレースなんか凄いエキサイティングなレースで、俺達が見ていてもワクワクするレースなんだ、無料というのは下手の極致。見に来る人も「どうせ大したレースじゃないんだろう?」思ってしまう、安くするのはいいけど、ただと云うのは上手くない。やっている俺達は何なんだ?

俺達はAP250(日本のJP250みたいなモン)とASB1000(ST1000とほぼ同じ)にエントリーしている。AP250にはアルフォンシ・ダクゥイガンという14歳のフィリピン人ライダーが走っているが、この少年は代替ライダーなんだが、思いの外成長著しい。

開幕戦のブリラムの頃は何とかポイント圏内(15位以内)にと考えていたレベルだったが、珠海で実現し、このもてぎでは10位以内に飛び込んでくるレベルにまで上達してきた。

本来のライダー、ジェイコブの怪我がどこまで回復しているかによるが、成長著しいだけにもったいない気がしてきた。

メインのASB1000にエントリーしている國井勇輝は、俺が鈴鹿で手綱をしめていたのが功を奏して?好調を維持、いきなりトップタイムを連発してライバルたちにプレッシャーを与え、予選では当然のようにポールポジションを獲得し、レース1に臨む。しかしこの絶対的な優位性が、かえって勇輝のプレッシャーになっていたようだ。

レース1のスタートで若干出遅れた勇輝、4番手あたりで5コーナーに差し掛かったところで他車と接触、運悪くオイルクーラーのフィッティングを直撃し捥げてしまい大量のオイルが噴出して更に引火、あえなくリタイヤ。転倒は無かったが黒焦げに消火剤で無残な姿で運ばれてきたマシン、翌日のレース2に備えなければならないので俺達は全力で翌日のレース2に向けて準備を進めた。

日曜日の朝ウオームアップ走行で好感触を得た勇輝はコーナーで見ている俺にガッツポーズでOKサイン。(レース2の後に見たいポーズだけどな)

レース2では完勝で、ホンモノのガッツポーズをしたのは言うまでも無い。