【COLUMN】2023年第44回鈴鹿8時間耐久ロードレースが終わった。

2023年第44回鈴鹿8時間耐久ロードレースが終わった。

 

“好事魔多し”今年は事前テストから順調で充実していたんだ。俺はフィリピンのプロジェクトを進めるために渡比していたので日本からの報告に「気を付けてな、好事魔多し、と言って順調に行っているからこそ慎重に行かないと、どこに落とし穴があるか分からないぞ」気を引き締めるように言ったモンだ。

 

しかし、時にはジジイの勘は当たる?ようで、調子のよかった國井勇輝が怪我をしてしまった、それもバイクはバイクでも足こぎバイク。自転車に乗ったトレーニング中に大怪我を負ってしまったのだ。普通にバイクに乗っていれば滅多に怪我などない勇輝が怪我をしたというのを聞いて、訳を聞いたら、複数で走っていて隣の自転車のチェーンが外れいきなり勇輝に倒れ掛かってきたとの事。たまらず勇輝は転倒したが、トレーニングに使っているバイクはペタルを引き上げる力を付けるためにビンディングで靴を固定しているので、転倒した時に足を着けずに肘から落ちて骨折してしまった。単純骨折では無く脱臼骨折で、あまり良くない骨の折れ方なんだ、肘に加えて手首にもダメージがあり“重症”になってしまった。

 

耐久ウイークの一週間前の出来事で焦った。(好事魔多し・・・地で行ってしまった)

 

ホンダHRCのセレクトライダーを貸出ししてもらえればと依頼したが、先方も同じ事態を考えてキープしている訳で、願いは叶わなかった。

 

八方塞がりの俺達は、やはりトレーニングで怪我をしている埜口遥希にかけるしかなかった。埜口は「明日バイクに乗ってきます。それで何とかなりそうなら乗ります」快諾とは行かないまでも前向きな返答をくれた。

しかし遥希には以前に釘を刺されていたことがある「8耐に出るなら事前テストとかちゃんとやらして下さいね、ウイークにいきなりとかイヤですからね」遥希の予知能力?に関心したモンだ。まったくその事態になってしまった。

 

ウイークでは重点的に遥希に乗る機会を与えたのは言うまでもない。

 

順調にEWCマシンに慣れてきた遥希に、俺達も何とかなりそうな空気が流れ始めた。が。

金曜日予選前のプラクティスで哲平がやってしまった。

俺達のバイクは簡単に言えば神経質な特性で、気を抜くと簡単に転倒につながる。(アレッ?何処かのレースでも同じような事態が)

遥希も「めちゃめちゃ疲れます」ナオは「ヤバイ、腰が」しかし今更どうすることも出来ない、慣れるしかないんだ。(乗らない俺は気楽なもんだよ、ゆうだけ番長)(笑)

 

哲平には十分な休養を与え、極力体力温存で耐久本番に備えることにした。

 

予選ではナオも遥希もキッチリ目標タイムをクリアしトップ10に入る事が出来た。

そのトップ10トライアルで遥希が笑わせてくれた。初めてのトライアル、俺が遥希に「遥希の経験には無かっただろう?鈴鹿サーキット貸し切りだよ、注目度100%だからな、行ったれ~」気持ちが高ぶった遥希、開け開けで行き過ぎてコース上でタコ踊りでした(笑)

 

ナオはキッチリタイムを出し、見事4番グリッドに収まるタイムを記録。

 

決勝では燃費を考え絞りまくったからバイクが走らない、分かってはいたけどトップには付いていけず、セカンドグループで争うレベルだった。(駄目だ、コリャ)

 

序盤に落としたポジションが中々挽回出来ずにいた終盤、俺達に救いの神が。微妙なタイミングと量の雨が落ちてきた。この場合チームによって作戦が千差万別、なぜなら狙いがそれぞれ違うから。

トップを走るチームは、ポジションキープで後ろを見ながら詰められないようにすればいいし、後ろにいるチームは素早くレインに替えてトップとの差を詰める作戦に出るだろう。上位に位置するチームは大体そんなモンでしょう。

 

俺達はと言うと、5位争いの7番手。サーキット周辺の友達に電話しまくり「どんな雨量?まだ降ってる?何分位降った?」情報収集している間に、転倒するチーム、ピットインしてレインタイヤに交換するチームなどが出てくる。

 

ライダーにはいつでもタイヤ交換OKの意味でP―OKのサインを出した、その時のライダーは遥希で、勝手にピットインして来た(勘違いするけどね)当然俺達をマークしていたチームもピットイン(電光サインボードはピット側には丸見えになるから気を付けないとバレバレ、でもそれを逆手に取れる)すかさず、ピットに入ってきた遥希にそのままスルーしろと合図、勘のいい遥希は止まることなくスルーして行った。

この作戦は成功したね、一気にポジションアップして表彰台が現実のものになってきた。

 

ウエット路面をスリックタイヤで走り切った遥希も偉かったし、最後のスティントでキッチリ仕事を全うした哲平も偉かった。二人を引っ張り頑張ったナオがチェッカー後ホントに嬉しそうな顔していたね、考えてみれば初表彰台だからね。

 

以前は優勝チーム監督のみがポディウムに上がる栄誉に浸れたけど、今年は3位までの全チーム監督が招待された。俺は約10年振りに上がった表彰台。でもポディウムの景色はやっぱり一番高いところからがいいな。いつかまた必ず。