【COLUMN】2022suzuka8hからAPへ

2022年鈴鹿8耐アジア選手権ラウンド4、そして全日本選手権第6戦オートポリスと立て続けにレースがあり、怒涛の一か月だった。

今年の鈴鹿8耐は三年振り、バイクもライダーも変わり、コロナの影響で外国人ライダーは招聘出来ず(特別に認められたチーム以外はネ)俺たちはライダーラインナップに苦労したよ。早くから決めていた浦本修充以外は自チームから選ぶしかない、ところがウチのエース?ライダー名越哲平は、春に痛めた脚が思いの外重傷で、手術をしない限り完治しないとの事。実際哲平本人も「走ることは出来ますが痺れてきて感覚が無くなるのです」言うのでライダー探しは難航、結局はダメなら残りの二人でやるしかないなとの結論に達した。

修充をエースに名越と爆弾?榎戸の三人で戦う事になったハルクチーム、ナオはウチを出てから随分成長したのが感じられたよ。3人の中で明らかに“お兄ちゃん”になっていた。

痛みを抱えながら哲平も頑張っていたので、チームとしてはまとまりが出てきた、が。爆弾男の育寛が初っ端からやってくれた。俺達の心配の種ではあったが、まんまと。(苦笑)

一回目の予選でもデグナーでヤマハのライダーにインを突かれ、驚いて飛び出してウイーク2回目のバラバラバイクになってしまった。タイム計測される前なのでノータイム、予選2回目に向かう時の緊張度はMAXに達していたね。タイムを出してピットに帰って来た時の育寛は、責任を果たせた安堵感でボロ泣きしてた(笑)

膝に問題を抱える哲平も一発タイムを気合で出し、TOP10トライアルでも頑張り望外の5番手グリッドをゲットした。

2022年鈴鹿8耐のスタートが例年通り午前11時30分にスタートした。

安定感とスピードを兼ね備えた修充がきっちりスタートを決め、トップグループを形成する中に位置し「よ~し、いいぞナオ」と、思ったまさにその瞬間、俺は目を疑ったよ。2周目のスプーン入口で、後ろからミサイルのように転んだバイクが突っ込んできた。いきなりリヤをヒットされたナオは為す術もなく真っすぐバリアまで飛ばされた。

8時間、480分、28800秒の戦いが、4分ちょっと250秒程で終わってしまった。

そうは言っても、ピットに戻ってきたバイクとライダーのためにも、そして応援してくれた人達に報いるためにも、完全に壊れたバイクを修復(使えたのはフレームとエンジンだけ)

して3時間後にバイクをコースに戻すことが出来たが、何とも言えない空虚な8耐でした。

疲れたが、気を取り直して翌週のアジア選手権に向けて準備のために帰路についた。

 

ARRC(アジア選手権)日本ラウンドは初めて菅生での開催。俺達はこの大会に向けて6月の全日本選手権に参戦していたので他のライダー達よりもアドバンテージがあると思っていたが、甘かった。

ヤマハチームは事前テストを敢行していて、金曜日のプラクティスから仕上がっている。(世の中そんなに甘くはないね)そうは言っても俺達だって黙って負けるわけには行かない。埜口はもちろんの事、ハルクのアジアチーム一丸となってライバル崩しに全力を傾けた。

レース1では埜口が見事な勝利を収めてくれた。しかし安心は出来ない。ライバル達が虎視眈々とレース2に向けて狙っているのをひしひしと感じた俺達は、レース2をどのように戦うか?更にセッティングを見直し、決勝前にビッグチェンジに踏み切った・・・が、そうそう上手くは事が運ばない。レース1もそうだったが、埜口は見事にホールショットを決め逃げに掛かるが、どうも様子が違う。悪くは無いが良くなってもいない。

逃げ切れずにつかまってしまった埜口だが、考えを変えたようで、先行するヤマハをフォローし離れない、つかず離れずの周回を重ねながら仕掛けるタイミングと場所を計っていた埜口は、最終のシケイン入口にインから飛び込み、見事に抜き去りそのままゴールへ。

最後までドキドキだったが結果2連勝することが出来た。俺は珍しく埜口に「苦労させたな、ごめんな」言ったよ。その日の晩御飯は埜口がしつこく食べたがっていた牛タン二人前奢ってやったよ。

間髪入れずにオートポリス。何と言っても今年のオートポリスは天気が良かった。天気さえ良ければオートポリスは大好きだ。とにかくライダーとセッティングの擦り合わせが難しい。日本のサーキットらしくないコースレイアウトがそうさせるのかも知れないが、とにかく面白いんだ。600の若手二人は苦しんでたね、国井は初めて走るし、千田も去年はインフルエンザだかコロナだか判らないけど、熱が出たので帰らせたので走ってない。(因みに何でも無かった(苦笑))

決勝ではスタート後多重クラッシュで赤旗が出てやり直しがあった。今年はST600の赤旗中断が多い、菅生の時も同じ。原因となった“ライダー”についたペナルティポイントに驚いた(3点3点1点合計7点!ワンレースでこんなペナルティ受けたのを見た事が無い)

ウチの二人の若手は波に乗れないまま終わってしまった。

JSBクラスで名越の代わりにチームを引っ張ることになった榎戸、8耐からの流れでバイクに乗り慣れてきた榎戸は予選でもパフォーマンスを発揮し、自身初となるフロントローに座ったのだが・・・。決勝の朝から原因不明の腹部不調に苛まれ、薬を飲むための水さえ受け付けない。朝のフリー走行を走ったが、それが精一杯だった。せっかく自分の力で得た一列目のグリッドだったので、取敢えずバイクを付け選手紹介まで済ませて、スタート前のウオームアップランでピットに入れた。悔しいのは間違いなく本人だし、俺達も何だか分からず、残念とかのレベルじゃない無念を感じたね。翌々日にライディングギヤを取りに来た榎戸、いたって元気でいつもの榎戸だった。なんだかなあ。