【COLUMN】2021最終戦AP

2021年最終戦オートポリス

早いもので、もう今年の最終戦が終わった。今回の事前テストは8月の上旬だったので気温も違い、当然路面温度も比較にならない。みんな条件は同じだから仕方が無いけど、やっぱりいいレースをするためには近い条件で行うのが良いに決まっている。

レースウイークに台風14号がもたもたしていて気を揉んだ、実際金曜日のART走行が台風の影響でキャンセルされてしまい、みんなぶっつけ本番みたいなセッティングになってしまった。(余裕のあるチームは岡山から直行してテストしている)

俺達は所帯が大きいので2週間も泊りっきりなんて夢のまた夢。結構きついレースになったね。

そんな感じで迎えたGP3のレース。昨年度ゼッケン3をゲットしている成田彰人だが、どうも今年は調子が掴めない。それでも事前テストでは一桁順位だったので期待が膨らんだが現実は甘くない。予選から苦しみ、決勝でも一桁順位に飛び込めなかった。来年はどうなるのか?クラスも含め考えどころだな。

ST600は千田と埜口、千田は一年目という事もあって型落ちのバイクで戦っている。俺達もその事を考慮にいれてターゲットタイムや順位を設定している。結論からいうともう少し上がって欲しかったな。まあ、来年は現行の型で戦えればもう少し上がってくると思われる。しかしこの千田、やってくれた。悪い意味で。

コースインする際にはピットエンドから急激にコースに出ると、コース上にいるライダーと接触する可能性があるので、ホワイトラインがあって、その内側を走らなければならない、まあ気持ちが急いているとカットしちゃうんだな。ペナルティポイントの対象になってしまった。

しかし問題はもう一人同じペナルティをもらったヤツが、そう埜口だ。今回埜口は年間チャンピオンが掛かっていて相当固くなっていた。普段は生意気で自信家みたいな雰囲気を出すくせに(笑)。

レースではランキング上位のライダー達がしのぎを削りなかなか白熱したいいレースをしていた。しかし終盤に差し掛かる12ラップ目、とにかくトップでゴールするしかない小山がリードし始めた(もう一人の同条件ライダー荒川は転倒リタイヤしている)。追うのは埜口、阿部、長尾の三人。ストレートエンドで1コーナー進入ラインのアウト側をキープしたい長尾が押さえる。埜口はその内側、更にセンター付近を阿部の順で1コーナーの進入ライン目掛け飛び込んで行く。その時にアクシデントが起きた。既に長尾の前に出ていた埜口が1コーナーアウト側にバイクを寄せる。抜かれたくない長尾はレイトブレーキのつもりだったのだろうが間に合わず、そのままグラベルに飛び出してしまった(寄ってきた埜口を肘で押し返す動作が見えるので、余計に自らがアウト側へマシンを出す事になったのだと思う)。

レースは常に危険と隣り合わせ。全日本のトップライダー達のマシンコントロール技術は我々の想像を超えるので語る積りはないが、このアクシデントには凄く後味の悪い出来事が多かった。奥行きが見にくい正面からの画像しか見ていないと、いかにも埜口が急激に寄せているように見える(悪いヤツにみえる)。しかしそれはレコードライン。ラインの取り合いなんだ(現に後ろにいた阿部も埜口同様アウト側に寄せている事からそれが言える)。埜口は寄せて行ったが長尾のスペースは残しているのが画像からも見て取れる。

果たして。レース審査委員会も同様の判断でレーシングインシデントとし、埜口に対するペナルティを科していない(当然別アングルの画像も確認しているのだろう)。我々が呼び出され説明を受けた時に「埜口選手の方が前に出ているので」と言っていた。

レースがとても危険なスポーツであり、ほんの少しのミスが取り返しのつかない事になる事は嫌と言うほど身に染みている。自分のチームのライダーが危険な走りをするようなら厳しく叱責する。それが故に全日本ロードレース史上最長の連続出場を果たすことが出来ているのだと思っています(元をただせば、普段から評判の悪い走り方をする埜口だからこその?)。

ミソが付きましたがめでたくST600チャンピオンになったことは褒めてあげたい。

対照的に悪い噂は全く聞かないST1000の榎戸育寛。コイツの悪いところは外からではなく我々内側から噴き出る。今回もやってくれた。前日の雨が乾き切っていない金曜日午前中の路面。わずかに外にラインを外した?(本人の弁)代償はあまりにも大きく、使えたのはエンジンとスイングアーム位じゃない?と言うほどのクラッシュだった。

担当メカニック達はセッティングどころではなく、マシン修復で手一杯になってしまう。それが最後にマシンの仕上がりに表れてしまう。セッティング不足で臨んで勝てるほど甘くない、ついには一桁ゴールも夢と消えた。来年こそはもう少し落ち着いた走りで上位を目指して欲しいものだ。

JSB1000の名越哲平は最後になってやっと本領を発揮してきたかな(遅いよ)。気合が空回りしたレース1はヘヤピンで止まり切れずオーバーラン。最後尾からの追い上げは見事?でした。レース2は一列目からのスタートで、俺が「一回ぐらい中須賀を脅かすレースをしたいものだな、スタートから飛び出せ」と言ったが、無駄だった。完璧なスタートでホールショットを取られ、その後はいつもの一人旅を許してしまった哲平。来年はもう少し脅せるライダーになろうな!哲平。

 

長い事お世話になっていた武蔵精密工業様が社内方針変更により今シーズン限りで協賛降りることになりました。2009年から我々のレース活動を本当に支えて頂きました。改めて御礼申し上げます。有難うございました。

全日本を支えるのは武蔵精密工業様や多くの企業様の力でもあります。単純に我々1チームだけのスポンサードだけでなく、鈴鹿のシケインに見られるような間接的なサポートが我々エントラントの活動の助けとなっていますね。そんなビッグスポンサーが全日本や8耐から抜けるのは寂しいですが、いつかまた戻ってきたいと思われるような日本のレース発展に尽くしたいと思います。