【COLUMN】Vol286 特別だった2020年シーズン

我々が経験した事が無い新型コロナによる多大な影響があった2020年シーズン。

全日本ロードレース選手権も、8月になって菅生で開幕出来た。主催者のスポーツランド菅生はもちろんのこと、MFJや俺達も感染対策について数多くの打ち合わせを行い、万全の体制でレースが開催されたね。

幸い今年の開催レースの中では感染者が出る事は無く、関係者はホッとしただろうな。

 唯一残念だったのは岡山大会。台風の影響を考え(各チームの移動時にまともに影響を受けそうだった)早めに大会中止を決めた判断に賛否両論があったのはいつもの事。(苦笑)

折角安全面を考慮して新規に作った2輪シケインも確認出来ないままだ。

 賛否両論と言えば、最近はゼッケン問題で揺れている。

MFJの新たな取り組みの一環で、既存のファンに加えて更に一般の人達を取り込むために打ち出した施策。本来ゼッケン番号は前年度のランキング順でチャンピオンは1番と決まっている、以降は順番でランキング上位は若い番号となる。(レースに詳しくない人でも若い小さな番号のライダーは速い人だと分かりやすい)

希望を出せば好きな番号を付ける事が出来る今までの規約だと、この部分では分かりにくい欠点?があるのは事実。しかしMotoGPで46と言えば誰もが知っているし93もそうだ。今や30と言えば中上。このゼッケンナンバーとライダーの一貫性は、古くはバリー・シーンがチャンピオンになっても7を付けて走っていた頃から始まったと思われる(もっと古くから有ったかも知れないが調べた訳じゃないので悪しからず)。何が言いたいかと言うと、それだけネームバリューと実績が伴って初めて、ファンに認知されるようになるという事。

 俺達の場合は少し意味が違い、応援してくれている武蔵精密工業のムサシ→634をPRする目的で付けた。当然初めの頃は認知されなかったから俺達は必死になって結果を出し、634→ムサシを印象付ける努力をしたんだ。この手法を模しているチームは他にもある。

ライダーのパーソナルナンバーは全日本の場合、ピンと来るのが少ない。記憶ではJSBの中須賀が21を好んで付けていたが、1も付けているので一貫性に乏しい(彼はメーカーの契約だから会社の方針かもしれないね?定かでは無いが)。

 昨日MXのレジェンド東福寺さんとこの件について話をした。彼は、MXの場合は赤ゼッケンの1番はライダーの目標で、みんながそれを目指している。ロードの人はそういった感覚はどうなんでしょうね?疑問を呈していた。

 レースは規則ありきで行うもの。規則が決まったらそれに従う義務がある。今回のゼッケン問題は「今までの考え方を見直し新たなトライをしてみましょう、皆さん協力お願いします」と言う事なんでしょう。

ロードレース参加者が減り、サーキットも開催するたびにマイナスの数字になるばかりだと継続が難しくなるのは当たり前。サーキットも営利企業、数字が上がらなければ継続が難しくなる。実際、このところ毎年のようにエントリー料金の値上げや走行料金の値上げが行われている事が、サーキットの経営状況を物語っている。

 元々モータースポーツはお金が掛り危険で、報われることの少ないスポーツ。ファンになる人達は、自分がとても出来ない高度なメカニカル技術とライディングに対して賛美を送り、その技術を目の当たりにしたくて対価を支払う。サーキットはそういった事を披露する場である訳だ。

 日本はモータースポーツに参加するのにとても便利な国で、掛るコストもとても少なくて済む。特に2輪はそうで、特段お金持ちで無くても出来る稀有な国。国土が狭いので移動経費も少なく、4メーカーのおひざ元で部品調達も容易で安い。アジア諸国のプライベートチームオーナーやライダーなんか間違いなく大金持ち。太刀打ち出来ない。要は、レースなんて高根の花で、自分には到底出来ないという人たちの憧れのモノなんだ。

果たして日本は?やる気になれば誰でも出来る。技術は別にして、真似事なら簡単に出来るから、軽く見られるきらいがあるんじゃないかな?

 今回のMFJの施策は、「若いゼッケンのライダーは真似の出来ない特別な技術を持った人達です。その素晴らしいライディング技術を楽しんで下さい」という事なんじゃないかな?それで新たなファンを取り込めれば我々参加者へのバックも期待出来るのかな。

 まあ、個人的にはせっかく皆さんに覚えてもらえた“634”で行きたいけどね。(泣)