Vol.266 2018年 開幕

2018年シーズンが開幕した。

今年は長い事ハルクプロのJSBクラスで戦っていた高橋巧がHRCに移籍。昨日の友は今日の敵?になってしまった。

新たにJSBクラスを戦うのは昨年のJ-GP2チャンピオン水野涼。涼がウチに来たのは13、4歳の頃。まだあどけない少年だったな。最近はかなり調子づいている。上原とのやりとりを見ていると、どっちが年上?上原は哲平にもやられているので、あながち涼のせいだけじゃなく、キャラがそうさせているのかも(笑)。今年のライダー3人の中では上原が一番年上(年齢を超越しているのが約一名いるけどね)。事前テストでは乗り換えもスムーズに行き、ポテンシャルの高さを証明した。

 J-GP2にチェンジした名越哲平。昨年はST600とARRCでSS600にチャレンジしたが、哲平には合わなかったようで、思うような結果を残せなかった。哲平も乗り換えはスムーズで、初乗りの筑波では調子の乗り過ぎてやってしまったが、それくらい気持ち良く乗れた証拠で、期待大でもてぎに入った。

哲平はムサシスカラシップトレーニングの一期生で元、忠サンのところにいたライダーだったが、SP忠男レーシングが全日本を止めたのでハルクプロに入った経緯がある。SP忠男といえば目玉ヘルメットがトレードマークで、数多くのライダーが育って行った。哲平も目玉ヘルメットに憧れた一人だったが、運悪くその希望は果たせないでいたので、俺は「いいよ、忠さんはレース止めても目玉ヘルメットは止める事は無い」と哲平に言い、晴れて目玉ヘルメットでデビュー出来る事になった。

 最後の一人は上原大輝。去年はJP250の国内クラスで快進撃、当然チャンピオンになって、今年はST600にチャレンジ。三人のチャンピオンの中で一人だけ乗り換えが上手く行っていないようで、苦戦している。最初のテストから転倒が続き、俺は「参ったな、コイツ大丈夫かな」と心配したよ。時折見せる非凡なところに可能性はあるんだけど、前述の二人のようには行かないので、俺は徹底的に基本操作をレクチャーした。

スカラシップで講師をやっている小山知良にも頼んだ。「悪いけどちょっと見てやってくれる?」本来なら敵になるライダーに厚かましい頼みだったけど、知良はいい性格で「いいですよ」と、本気で上原の面倒を見てくれたよ。お蔭で随分良くなった。

 レースはJSBのレース1サイティングラップで涼が転倒。重大では無かったのでピットで修理してグリッドに付いたら、オフィシャルが「失格です」??俺は「何で?規則書を良く見てよ」と言ってレーススタート。ところが即行で涼に黒旗提示。どうしても走らせたくないらしい。失格ですと言った事に対しては俺の言い分もあるから走ったが、黒旗の提示には従うしかない。別の話で、守らなければならない義務がある。

 当然俺は確認しにタワーに上がったよ。

競技役員の判断は「ピットに入ったからリタイヤです」そう判断出来る文面は規則書にあるが、全く反対の一項もある(サイティングラップ中はピットで修復調整しても良い)。要は、競技役員の規則書を順守する姿勢が、俺達の規則書を信じて行った行為を真っ向から否定された判断だった。

とは言え、黒旗を出してまで走っているライダーを止める行為、俺はその思考回路が理解出来ない。ペナルティなんてレース終わってからでも掛けられるが、走る事を止めさせてしまったらどうにもならない。

Wスタンダード?の規則書に問題があるのは明白だが、片方だけの記載を頼りに、チームに対しての通告(通告義務不履行?)も無しに黒旗を提示する暴挙に出た競技役員。

あたかも「俺の命令が聞けないのか、死刑だ」権限を与えると、それを振り回す輩と同じ。道路工事で交通整理の旗持たせただけで勘違いする輩がいるけど、あれと同じだ。結果に対して最終的には何の責任も持たないからね。残念なレースでした。

レース2では慎重に走り、実質デビューレースを無難にシングルフィニッシュで終えた。

 名越哲平は、何と!ポールポジションゲットで期待が膨らんだ。決していいスタートでは無かったが、何と言ってもポールからのスタート。上位陣に付いて様子をうかがっていた矢先、突然のストップ。何が起きたのか全く想像出来なかった。マシンが帰って来て確認したら信じられない状態に。長い事レースやっているけど初めての経験。哲平には可哀想な事をした。

 上原は泥縄のような知良のレクチャーだけじゃダメだったな。随分良くはなったけど、レースにはならなかった。まだまだこれからだ。取敢えずは胸を張って、ハルクの中では俺が年上なんだ!というところからだな(笑)。

 

ムサシスカラシップトレーニングのセレクションを行い、今年の三名が決定した。

毎年選択には苦労するが、今年は本当に困ったよ。坂田、小山に加えて涼と綿密な話し合いで決定した今年の三名。いつの日か活躍してくれるように最大限のレクチャーをして行く。