Vol.244 218周の彼方
今年も鈴鹿8耐が終わった。
昨年の雪辱を果たすべく、俺達は昨年の暮れから足りなかった部分を抽出し、出来る限りの努力を続けたが・・・全然足りなかった。
全日本でもテストを重ね、全てを8耐に向け積み重ねたつもりだったが、僅か半年強の時間では何も出来なかったな。相撲でいえば緩ふん、キッチリふんどしを締めて土俵に上がれなかった。事前テストでも一向に上向かない、その状況はレースウイークでも変わらなかったよ。余りにも問題が多すぎた、予選は最後の賭けで何とか“見映え”のするタイムを刻んだけど、あれは110%。無理だったね。
その計時予選でマイケルがアタック中某老舗チームのライダーと接触、彼はコースアウトして転んだ。俺はすかさずそのチームのピットへ挨拶に行ったが御大は頭から湯気を立てて怒っていた。怒られる状況かどうか分からないが、レースは一触即発、ましてやタイムアタック中のライダーの前で、アウトラップのライダーはペースが遅いのだから気を使うべきだと思うな、その位の事は分かっているトップライダーの筈。
予選が終わった時、俺とマイケルにタワーから呼び出しが。審査委員のおっちゃん(外人)「何で呼ばれたか分かるか?」俺は「分からない」おっちゃん「さっきの接触についてです」マイケル「彼は有名チームなのでリスペクトしています、予選中になぜあんなに遅く走っていたのか理解出来なかった」おっちゃん「まあ、仲良くやって下さい、気を付けて」
(笑)
レースは危険と隣り合わせ、だからこそライダー達は自分も含めて気を付けなければならない、それでも事故が起きた時はお互いの無事を祈るんだ。その上で正々堂々戦うのが正しいレースだと思っている。
110%で予選を戦った俺達には翌日のトップ10トライアルで戦う余力は無かった。取敢えず何とか消化したって感じだったな。普通トップ10トライアルを走り終わったライダーにはスタッフが拍手で迎えるが俺達はそれが出来なかった、走ったライダー二人も楽しんだ感は無く、やれやれって感じだったね。
今年の俺達を観客のみんなをどんな目で見ていたんだろう?全く余裕が無く明るさも無いピット、ただ必死で8時間を無事に終える事のみに終始していた感じ。
レースがスタートしても順位なんか関係ない、その後快走して218周を走り連覇を果たすヤマハチーム。俺達はただ付いて行くだけ、仮に完走しても勝てるレースでは無かったな。それ位差があったんだ。
果たして、俺達の心配は的中した。3スティント目、ニッキーの時に俺達のバイクは息の根を止めた。バイクが運ばれてピットに帰ってきた、原因究明中に絶望的な事実を目の当たりにして、リタイヤ届けにサインした瞬間俺達の8耐は終わった。
二年連続でリタイヤ届けを書くなんて。その二年ヤマハチームは連覇を果たした。レースが終わってヤマハの監督吉川和多留が「重樹さん、二連覇簡単でしたよ」俺は悔し紛れに言ったよ「知ってるよ俺達もやったから」
来年こそ勝負の大会になる、今度は俺達がやったことのない三連覇に挑むヤマハチーム、絶対に阻止しないと。吉川に「僕は三連覇しましたから」言われたくないからな。
和多留、おめでとう。強かったよ、好条件だったとは言え218周をクリアしたのは偉かったな、俺達の設定より多い周回数。勝てなかったな。
俺達の2017年第40回鈴鹿8時間耐久ロードレースは、もう始まっている。