Vol.197 アラゴンGP

アラゴンGPに行ってきた。

アラゴンサーキットはまるでアメリカの荒野を彷彿させる、真っ赤な荒野に忽然と現れる。

バルセロナから3時間弱、高速道路から一般道に外れて走るので、距離の割に時間が掛かる。飛ばせばもっと早く着くかも知れないけど、最近ヨーロッパの国々もあちこちにレーダーが配備されているので昔のよう?には、行かない。

サーキットが荒野の真ん中にある訳だから、当然ホテルも遠くになる。最短でも40Kmくらいは離れる。俺達は近所にあるキャンプ場のロッジを宿にしたよ。このキャンプ場のロッジにも多くのレースチーム関係者が泊っていたけど、それ程大きくないので予約を取るのが難しい。(1年前のGPの時に予約する)

サーキットから近い宿泊場を確保するのは本当に難しい作業で、長年GPを経験しているベテランがセッティングしてくれないと難しい。

キャンプ場と言っても、ちゃんとしたレストランはあるので食事と呑み?には困らない。まあ、食事に関してはチームのホスピタリティーブースがあるので困る事はないけど、イタリア料理が嫌いな人は辛いかも?(俺は雑食性なので問題無い)

土曜の夜、このブースで夕食を食べなさいと指令?があったので行ったら、とんだサプライズ。俺の誕生パーティーが開かれてしまった。どうもタカがチームのみんなと共謀して企んでいたらしい。

美味い料理と酒。みんなの気持ちが伝わって凄く嬉しかったな。因みに近所のレプソルブースでも誕生パーティーやっていたらしい。ダニ・ペドロサが同じ9月29日生まれなんだって(だから何よって感じだけど)。

予選の最後に転倒したタカが怪我も無く、気持ちを込めて誕生パーティーやってくれたので明日の決勝もイイ感じで臨めると思っていたんだけど・・・・。

予選の最終アタックで転倒したので決勝グリッドは厳しい位置になってしまった。俺はタカに「落ち着いてスタートを決め、じっくり前に行きなさい」とアドバイスした。

まあまあのスタートで、コーナーをひとつ・ふたつクリアーして行く。モニターを見ていて(あれっ?ヤバイ!タカ?)5コーナーでタカがまさかの転倒。

オープニングラップに転倒なんて(ナオじゃないんだから)信じたくなかったが、まさしくタカだった。デ・アンジェリスが不穏な動きをしていたから当てられたのかも知れないが、タカも分からないと言っていたし、レースを失った事には変り無いのでしょうがない。

転倒後再スタートしたタカ、最後尾から1分以上の差がありトップグループにラップされるかと思ったが、カウル・スクリーンが割れ、リヤブレーキを失ったマシンでトップグループに負けないタイムで周回し、最後の周に最後尾を捉え、ビリを免れた。

懸命に走るタカにサインエリアから声援を送り(頑張れ!この経験が明日に生きるから)涙が止まらない。きっとタカも同じだっただろう。

ヨーロッパラウンドで結果を残す目標は達成出来なかった。もちろん次回もてぎでは最高のパフォーマンスを見せて欲しいし、結果も欲しい。幸い、チームと来年の契約も更新する事が出来たので心配は無くなった。このところ日本のライダーが世界で走る環境が少なくなってきているので、来年も走れる事になって良かった。

アラゴンにヒロも来ていた。彼の来年の就職活動だと言ってたな。思えばヒロから続いているウチの卒業生達、ヨーロッパの連中に日本人ライダーの速さを見せつけ、全日本からの卒業生を受け入れさせないといけない。今まさに、その役割をタカが担っているんだ。

俺も少しでも力になりたい、後に続くウチの全日本ライダー達のためにも。