Vol263 もてぎGP

GP2クラスでチャンピオンを獲った涼に、お祝いでMOTO2クラス参戦を決めた。

事前の練習を行い、普段使いなれていないダンロップタイヤの感触を確かめさせて本番に備えた・・・つもりだった。KALEXについては光太郎代表がタカと2シーズン戦っていたのでセッティングについてもデータに不足は無かったが。

俺達には二つの不安があった。一つはウエット、そしてもう一つはKALEXシャーシー。なにせ良く壊れるからね、俺はコワレックスと呼んでいたくらい(苦笑)

涼はウイークが雨でも全く動じていなかった、逆にチャンス到来ぐらいに考えていた節がある。実際国内ではウエットでの速さは群を抜いていたし、自信が有ったのだろう。

果たしてレースウイークはFP1から雨、元気良くコースに飛び出して行く涼。タイム計測1周目、いきなりトップタイム。「やってくれるなよ」思ったと同時に、無線で「涼転倒」俺はコースサイドからピットへ戻り修復可能な状態を確かめた。涼に「もう少し様子を見てからペース上げた方がいいな」アドバイス、その後FP1は終了。涼は「どこでも転びそう、全くグリップしない」訴えたが、俺達に出来る事は更にヘビーウエット寄りのセットを選ぶ事しか出来ない。(タイヤは決められたコンパウンドのモノしか支給されない)

いくらイコールコンディションっていっても、お金出してタイヤも買っている訳だし、みんな同じだからと言われても釈然としないな。(今のGPはショーとしての色合いが強く、純粋に速さや技術を競うレースでは無くなっている気がする)涼は全日本で、もてぎのウエットは、あれ位の雨量なら2分1~2秒では走る。ところが今回は全員8秒前後でしか走れないし、転ぶ。転倒台数の多さと言ったら半端じゃなかった。

さすが隣のピット緑色のお兄ちゃん。タイムは大した事無いけど転ばない。全日本でもダンロップを使いKALEXを使っているだけに俺達とは年季が違うよと、ばかりだ(苦笑)

FP2でも涼は同じパターン、トップタイム記録、転倒。(ヤバいスペアパーツに限界が)

涼は一気にトーンダウン「初めてウエットが怖くなりました」ほらな、昔のGPでは絶対に無かった言葉(イコールコンディションで頑張りましょう)見せ掛けのレースに翻弄される若いライダー達。

以前のグランプリレースとは、携わる人、メーカー、オーガナイザー、サポートメーカー等すべてのモノが最高だった、最高のモノを魅せた。

今は?笑っちゃうね、全日本より6秒も7秒遅いタイムでしか走れないGPライダー達。

どこに夢がある?確かにドライでは速いタイムを記録しているが、残念な気持ちが強かったな。速く走るためのセッティングではなく、転ばないためのセッティングなんて「これがグランプリ?」

予選では奇跡のドライ路面がわずかに顔を出した、この予選の一瞬だけグランプリっぽい感じだったな。特にタカのタイム出しは見事だった、最後の最後にタイムを塗り替えポールポジション!カッコ良かった。

涼?チェッカーのタイミングが、後10秒早く回ってくればもう1周出来た。度重なる転倒が原因か、メインSWの接触不良が予選で出てエンジン始動に手間取った。どんなレースでも転倒は怖い、特にスペアマシンの無いクラスは神経を使う。

結局面白くも何とも無い順位で予選が終わってしまった。見せ場無し(苦笑)

翌日の決勝も雨。最善を尽くしセッティング。これしかないと送り出したが序盤からペースが上がらない、あの涼が決勝でビビるはずが無いのに、ポイント獲得すら出来ないまま終了。

レース後涼のコメント「全くダメでした、アクセル開ける事が出来なかった」からどこかに異常が、もしや?コワレックス本領発揮?

見事にクラックの入ったリアスイングアーム、荷重が逃げてグリップなんかするはずが無い、涼はもちろんの事、俺達にとっても残念な結果だったな。せっかく応援頂いた武蔵精密工業を始め皆様には合わせる顔が無い。

いちばん残念だったのは、涼にメディアが取材で「GPライダーの走りを目の当たりにしてどうでしたか?」質問。涼の返答「目の当たりにした印象を言える程の走りを自分が出来なかった」 涼にとって良い経験になるはずだったのに。(泣)