Vol.257 前半戦最後のオートポリス

俺が楽しみにしていたオートポリス。天気が良ければ他に類を見ないロケーションを持つオートポリスだが今年は・・・最悪だったな。

前週の事前テストでは本当に良い天気で気持ちが良かったのに、本番は全く駄目だった。

それでも金曜日のART走行まではもっていたので、初めて来たマイケルなんか「ベリービューティフル、ファンタスティック!」と絶賛してた。俺は「今日までだよ。明日からは雨と霧さ」と教えてやったが、まさかあんなにピッタリ当たるとは(苦笑)。

初めの犠牲者?はJP250の連中。土曜日のワンデー開催なので予選が出来ない。もちろん決勝も出来ない。主催者は最悪、前日の走行データを元にグリッド決めをしてでも決勝レース開催をと目論んだが、無情な雨と霧はそれも阻んだ。九州の日没は遅いので「時間を目一杯遅らせてもレースやってあげるのが遠方から来た参加者の報いになるのでは?」と提案したら、参加者の中から「そんなに遅くなったら帰りの飛行機に間に合わない」という声もあがり、結局中止の選択。そんなに帰りたきゃ帰ればいいんだ。レースをやりに来て、帰りの足を確保出来ないからなんて、信じられない。主催者も面倒?だから、やらないで済むなら止めましょう、となってしまった。

前回のもてぎで圧倒的なタイムを記録しながらウエットの決勝で涙を呑んだ大輝なんか、リベンジを果たしに来て、それが出来ず涙も出ないくらいだった(事実、前日の走行でも初走行ながら他を圧倒していた)。

結局、土曜日はJSB1000のタイム計測が奇跡的に出来ただけだった。

明けて日曜日。朝は何とか走れたのでJ-GP3ST600と予選が出来た。JSBのフリー走行、J-GP2の予選と、順調?にスケジュールは進んだ。決勝も午前中の2クラスをこなし、俺達は久し振りに表彰台に上がった哲平のレースに喜んだりしていたが、ピットウオークの間に雲行きが怪しくなってきた。

案の定、JSB1000のスタート進行時にAPの悪魔がやって来た。気まぐれな天候に翻弄され、モタつく運営。何とかスタートしたが、すぐに赤旗中断。再スタート時も更にドタバタ。訳が分からないマイケルに「落ち着け。お前はスタートに集中してダッシュすればいいんだ。頑張れ」素直なマイケルは俺の想像以上にスタートダッシュをきかせ、一時トップを走ってた(アイツやっぱりヤバいな。8耐では調子に乗らせないようにしないとな、と心に決めた)。

第2レース時に俺達はサイティングラップを目一杯使ってスリックタイヤをスクラブをするつもりだった。俺はコースオープンと同時にストップウオッチをスタートさせ、巧も精一杯ペースを上げてサイティングラップをこなし、ギリギリ間に合ったと思ったら、あと10秒あるはずのオープン時間が突然赤に(俺達が色々考え、面白いレースにしようと思っていても関係無いね)。俺はグリッドには向かわずタワー4階に行き「何で止めた?」と聞いた。その答えは「オフィシャルミスです」 で、俺は「じゃあペナルティは当然無いね」。競技監督の答は「はい、申し訳ない」。

あそこで3周目が行けたら展開が変わっていたかも?(いや、違うな。あの時点で何か俺達のレースは悪い方向に向かっていたんだな)

レースでは巧が“絶対に勝つ”という気迫が伝わってきて胸が熱くなった・・・が。

必死に逃げる中須賀に追い付き、ヨーシ勝負!と思った矢先のペースダウン。それも半端じゃない。俺は熱くなった胸が凍り付いた。

ピットに戻り、マシンを降りた巧に掛ける言葉が見つからなかった。巧がどれだけ長い間、あの場面を待ち続けたのか。そしてやっと訪れたその時に。

重く長い沈黙の後、やっと気持ちの整理を付けた巧がポツリポツリと状況をコメント。

失ったポイントなんか関係ない。普通に巧が走ればすぐに逆転出来る。それよりも戦うチャンスを逃した事のほうが大きい。それはもう、取り戻すことが出来ないから。

俺達がこの後、8耐までにやらなければならない事が数多くある。今回のトラブルも解析して対策が必要になる(唯一の救いは8耐前にトラブルが出た事かな?)。

 

暗い気持ちを明るくしてくれたのはJ-GP2の涼。スタートこそ柔らかいタイヤを履くライダーに先行されたが、今の涼はそんなのモノともしない強さがある。太郎が必死に食らい付いてきたが、太郎曰く「カミソリのような進入」で何度も得意の3コーナーでかわし、逃げ切った。涼は普段漂々としていて、どこにあの強さがあるのだろうと思う。でも油断しちゃいけない。冷静に分析しなくちゃ。「涼!まだまだ、全然遅いよ」勝てばいいってモンじゃない。涼が目指しているところは何処だっけ?もっと頑張れ!足りない足りない!()

これから一か月、8耐本番に向けて最後の仕上げだ。タカがアッセンで3位表彰台。ジャック・ミラーも楽しみ。

今年の鈴鹿8耐は落とす訳には行かない“ホンダ”の威信を掛けて戦うんだ。携わったみんなの代表として、仕上げの舞台を俺達に委ねてくれたから。