Voi.225 2014年鈴鹿8時間耐久レースは稀に見る大会だった。

レースウイークは快晴が続き、毎年の事だけど梅雨が明けて翌週くらいに行われる8耐はホントに暑い印象がある。ところが今年は異変が。

レース本番、それもスタート直前になって、にわかに西の空が真っ黒に。選手紹介も終わり、スタート進行に入ると大粒の雨が落ちてきた。半端な雨じゃない。俗にいう「バケツをひっくり返したような」凄い雨。鈴鹿のホームストレートは一瞬にして川。マシンをグリッドに並べていたメカニック達は全員びしょびしょ。さすがに主催者もたじろぎ?スタートディレイ。結果的には好判断。あのままスタートさせたら大変だった。全チームがスリックタイヤだったと思うし(レインタイヤのチームいたのかな?まさか)当然1周でみんなピットイン、大混乱のレースになっていただろうし無事に帰って来られないチームもたくさんいただろう。

毎年恒例の11時30分から、1時間“5”分遅れて今年の8耐は始まった。

鈴鹿で雨のレースを喜ぶのは11番青大将のチーム。“鈴鹿・雨・秋吉”三種の神器?みたいなモンで。その速さは半端じゃない(汗)。 俺は1スティントで何秒離れるかな?と計算していた。ヤバい!1分近く離れてしまう。鈴鹿はドライなら1周2分10秒前後、たった1回で半周近く離されてしまう。これじゃスタートホールいきなり3連続OBで、藤井にハンデあげたようなものだ(苦笑)。

でも、ウエットレースがそんなに続く訳でもないし、ドライでじっくり追い上げよう。俺は考えていた。「ドライならオランダの神風小僧マイケルがいる。巧もジョニーと同じくらいでは走る。この路面温度なら秋吉は大してペースが上がらない。1周2秒は難しいけど詰める事は出来る」2スティント目、俺はレオンとジョニーの差を計りたかったのでレオンを出した。レオンは頑張っていたがジョニーとの差は少しずつ離れて行ったりところが2スティントの終わり間際にまたしても雨がりせっかくドライになった路面は、またしても完全ウエット。「まいったな、もう少しで3回目のルーティンだ。またウエットで秋吉か」

俺は頭をフル回転。「ここは周回数を稼いでおこう。後の展開に幅を持たせておくために」

レオンは頭を横に振りながらピット前を通り過ぎる。タイムはロスしたけど、これで他のチームよりもだいぶガス補給を遅らせる事が出来るし結果的に周回数も稼ぐことが出来た。

ほぼ通常ルーティンでピットへ帰ってきたマシンを、巧みに託す。マイケルでも良かったが、経験の少ないマイケルに雨スティントを任せるにはリスクが高いと思ったから。

果たして、秋吉は水を得た魚?のごとく、ハイペースで周回を重ねる。3スティント目が終わる時には1Lされてしまった。放送でピエールが盛んに「TSRのワンサイドゲームか?」みたいな事を話していた。「ふざけるな、それはレースが終わってからの話だよ」耐久レースは、まず完走ありき、その上で結果が付いてくる。

勝負の4スティント目。初めて走ったマイケルが快走。毎周1秒ずつジョニーを追い詰めていく。昨年は1スティントを走り切れず、目に涙を一杯ためて「ごめんなさい・ごめんなさい」と謝っていた姿は、そこにはまったく無かった。ドライで勝負の5スティント目。俺は勝負と見た。最速のピット作業で巧を送り出し、巧も意気に感じて?か、ハイペースで秋吉を追いかけ、すぐに追い抜いて行った。

ドライ勝負なら負けない自信があったし、事実圧倒していた。焦った?秋吉は130Rでダウン。あっけなく勝負が付いてしまった。

TSRチームがダウンしたのは寂しかったが、今度は俺達が追われる番。だけど俺達には余裕があった。最初に1周、その後レオンが稼いだ1周。この余力が効き、SCが入るたびに2位チームが遠ざかって行く。俺たちのアドバンテージはどんどん大きくなっていった。6スティント目、俺はマイケルに「マイケルショーはもういらないよ。大人しく行け」と言って送り出した。それでもマイケルはファステストラップを記録しながら快走した(笑)。

最後のスティント。俺達の勝ちは見えていた。俺は1スティントしか走っていないレオンにしようか考えたが、チーフの堀尾は「社長の気持ちは分かりますりでも、ここは勝ちに行きましょう」クールな奴だ。俺は「そうだな、じゃあお前がレオンに言って来い」と言ったら、「それは社長の役目です」なんだ、お前の頭の中も同じじゃないか(苦笑)。俺はチームスイートに走った。レオンの所へ行ったら、俺の言葉を聞く前にレオンが「最後は巧?」と自ら言ってくれた。これだよ、この気持ちが俺達の強みだ。言葉なんか片言の英語だし、ホントに通じているのか?と不安な時もあるけど、勝ちを狙うための気持ちは同じ。俺は2連覇を確信した。

ホントにみんなが喜んでくれた。良かった・良かった。2014年の耐久が終わった。

レース後、ホンダファミリーの打ち上げでホンダチーム5連覇を報告出来たし。藤井の事も少しイジッておいた。(笑) 当然?のように、打ち上げの二次会は大盛り上がり。いいよ、騒ぐだけ騒げ、その位みんな良く働いた。