Vol.150    2010鈴鹿8耐!

勝ちました!
よく、悲願の優勝!とか言う言葉を使う。今年の鈴鹿8耐を獲った時、俺にはそんな言葉が空々しく聞こえた。“悲願”なんてそんなに簡単に言っちゃいけないよ、普通のスプリントレースに比較すると大がかりだけど、俺達のいつもやっている全日本選手権の延長戦上に鈴鹿8耐があった。

レースは真面目に一生懸命やっていると必ず結果が伴ってくると信じている。俺達の8耐もそうなんだろうね、本格参戦7回で4度の表彰台、内優勝1回。悪い数字じゃない。(ホンダワークスは特別)“悲願の”なんて何十回も参戦しているチームに失礼だよ。
俺達が真面目に一生懸命レースに取り組んでいる証しです。ナンチャッテ(笑)好きでやってるだけなのに。

俺が毎年8耐に参戦する際に気を付けていた事がある。“チームの和”だからライダーを外部から招へいせず、毎年自前のライダーでチームを組んでいたのは、そう言って考えからなんだ。今年は初めて外部のライダーを招へいした。俺達が届きそうで届かない表彰台のテッペン、何かが足りなかったからだ、俺は慎重にライダーを選択し清成龍一に決めた。
龍一は性格が良くガッツがある。問題はセッティングだが、そこは何とかなるだろうなんて簡単に考えてた。(とんでもなかったが)

俺達も10回近く8耐やって、外からライダーを呼んでも対応出来るだけのスキルを積んだはずだ、それが無ければ簡単に外部ライダーなんて呼べない、それも勝つために呼ぶんだから能力を発揮させなければ意味がない。

今年のウィークは完全に龍一のために使った。巧は乗るたびにセッティングの変わったマシンに乗らされ、調子が悪くなってしまった。乗るたびに首をかしげ、シリアスな表情の龍一。その横では巧がボー然としてる。(困った状況だな)俺は思い切って完全に巧セットを捨て、龍一セットで行く決心をチーフの堀尾に伝えた。堀尾も思い切った手法が必要との認識でいたから仕事は早かった。

金曜日の予選で思わぬトラブルが巧を襲い、巧は1本目の予選をまともに走らなかった。ただでさえ巧に走り込ませたい俺は2本目を終え、トラブルで痛めた巧の膝を案じながら翌日のスーパーポール予選を考えた。安定度から行けば清成、レースを考えれば巧に乗せたい。(だけど巧の膝が)

実は予選一本目で転倒者が落としたバンクセンサー?か何かが巧の膝に直撃、以前より膝を痛めている巧には衝撃的な痛さだったようだ。
SP当日の朝、フリー走行で最後のセッティングを試し、決勝セットを決め、巧を走らせる事にした。俺達はあくまでも決勝にこだわり、SPを捨てた。それでも巧は4番手のポジションをゲット、スタート順位が落ちなくて良かった。(カッコ悪いからね(笑))

レースウィークで最後の最後までセッティングにこだわったのは初めての経験だった。二人のライダーが安定して速く走るためのセットを試しているので、他のチェック項目、たとえばGASのレスチェック、その他の確認作業などは完全に第三ライダーの貴晶に託された。タカは黙々と自分の使命を果たしていた、若いからホントは走りたかっただろうな、可哀想な事をしたよ。

チームがうまく行くために裏方で頑張るスタッフがいるのと同じだが、ライダーは表舞台で戦いたいからね。今回のタカにはF1で言うリザーブドライバーの仕事をしてもらった。お陰で勝つためのセッティングを心おきなく模索出来た。それでも明るく最後まで頑張ってくれたタカ、必ずその経験が生きる時があるよ、有難うタカ。

俺達の戦う準備が整った。