Vol.60  不調挽回!

先週は筑波で、今週はオートポリスでテストだった。
開幕戦では何年振りかの屈辱的なリザルトになってしまったハルクチームは、早いうちに元に戻すべく精力的にテストをこなしているが、鈴鹿で2位になったヤスも、オートポリスに来たとたんに元気がしぼんでしまったし、コニーはトレーニングのやり過ぎとかで腰痛に顔をしかめている。森に至ってはどこから手を付ければいいのか分からない位、重症なのだ。
調子の悪いチームを立て直すべく俺もオートポリスへ飛んだが、コースサイドで見ていてもあまりに多くの課題があってまとまらない。
チーフの堀尾も、冴えないヤスのタイムに頭を抱えているのが良く分る。
基本的な部分に問題がある訳じゃないから厄介なんだ。ライダーがほんの少しずつコースを攻略出来ないだけなんだ。
去年ここで快走、優勝したヤスが浮かない顔してる。
ホントに困った奴らだ。

過去に何度もこういった経験をしているが、問題なのはライダーも一緒に経験している事だ。真っ白な頭を持ったライダーは直ぐに他の色に染める事が出来る。しかし色(経験)の付いた頭を他の色には染めにくいものなのだ。ライディングテクニックは一流のものを持っているだけに、うまく行かないと余計に悩んでしまうようだ。

悩む俺達とは対照的なのが藤井率いるTSRチーム。この間のレースでは寝た振りしてた猛がなんだか調子良くなって来た。走り終わってからハルクのライダー全員が辻村先生の講習を受けてたよ(苦笑)。

TSRといえば、アルバセテ(スペイン)の6時間耐久レースに行くらしい。昨年念願の8耐優勝を成し遂げた藤井は二連覇を目論見、新たなトライをしている。
藤井らしい発想だ。
簡単に言えば、今年の8耐はTSRが去年使ったSB仕様のマシンの出走がレギュレーションで認められないことになったんだ。ところが世界耐久選手権に出ているチームに限ってはSB仕様のマシンを使える。
へんな規則だけど主催者が決めてるんだからしょうがない。
どうしてもSB仕様で走りたいTSRチームは権利を得る為にスペインまで行くんだ。
エライ手間とお金を掛けた手法である。
全日本選手権とテスト、その合間を縫ってマシン作りと発送を含めた準備。その作業がどれ程大変なものか、同じ仕事をしている俺達には良く分かるよ。

昨年は214周で70秒の差を付けられた俺達のチームが、1周当たりにすればコンマ4秒に満たないその差を、何とかJSB車両で埋める努力をし、片方は殺人的なスケジュールをこなして勝つ努力をする。
だからレースは面白い。
そう言う奴が減ってきた昨今、稀有なチームである。ホンの一瞬のミスで全てが終わってしまう事だってある、一年に一度のレースのために、ホントにレース馬鹿だよ。