Vol.5  ハルク・プロのこだわり その1

ハルク・プロのロゴの横には必ず「HIGH QUALITY MOTORCYCLE PARTS」という文字が入っているのに気付かれている方も多いと思う。
モノを造るという行為を行なう際の考え方として、二つあると俺は思っている。
一つは、自分の満足のいくモノを造る、というもの。
そしてもう一つは、万人に受け入れられるモノを造る、というもの。
前者の場合、出来上がったモノの中には『こだわり』があるから、そのこだわりを受け入れることのできる人にとっては、とても使い勝手が良く、クオリティに関しても申し分ないものになるはず。『こだわり』という言葉にふさわしいスペシャルなモノになるわけ。ただし、そのこだわりが強すぎると、万人受けしにくくなってしまう。
後者の場合、万人に受けはするけど、逆に言えば特徴がないからだれにでも受け入れられるわけで、スペシャルという言葉の対極に位置するモノとなる。

ではハルク・プロがレーシングパーツを造る時にどうするかというと、自分たちなりのこだわりを持ち、造っている。つまり前者の立場でのモノ造り、となる。ではそのこだわりとはなにかというとまず最初に、自分たちがレースを戦う中で、技術、性能アップはマスト。
例えばST600の話をすると、このクラスは改造できる範囲が狭いから、変更できる一つ一つのアイテムの重要度は高く、それぞれに対してこだわりがないと、バランスが取れずにパーツの存在がバラバラになってしまう。変更できるパーツ点数が少ないがゆえに、一つ一つのパーツのクオリティが低いと、パフォーマンスアップどころか、ダウンさせてしまうことにつながりかねないわけ。
ではうちでST600のコンプリートマシンを造る際にどうしているかというと、チーム・ハルクプロのライダーである安田毅史や小西良輝が乗るマシンそのものを造る作業をしているわけ。営業用にコストダウンしたようなマシンは造りたくないし、そんなことをしたくてこうした仕事をしてるわけじゃないからね。もちろん、ある程度はコストに左右される部分で妥協というものがないわけではないけど反面、ある部分に関しては、コストアップになるのは分かっていても手をかけて造ったりという譲れない部分が必ずある。
例えばレースをしようと考え、一般ユーザーがST600のコンプリートマシンを買ったとしよう。買いやすさという点で言えば、ローコストの方が手は出しやすい。でも、とっつき易くはあるけど、レースに参加しようとした時、操作性、クオリティに問題があったり、付いていないといけないパーツが付いていなかったりして、マシンのパフォーマンスを100%発揮できないとしたら、そのマシンを購入したユーザーは満足することができないのは明らか。
そうしたことというのは、ハルク・プロとして許せないこと。
万人受けして、見かけだけは美しいとか、レーシングパーツのように見えるモノとか、コストダウンによってパフォーマンスを100%発揮できないようなモノは、我々としては重大問題なわけ。性能面で妥協のあるようなモノというのは、ユーザーに対して重大な裏切り行為をしているような気がするんだ。
そもそもバイクという乗り物は耐久消費財であり、使い捨てのような安価なモノではないと俺は認識している。
そんな高価なバイクに、安価で使い捨てのようなモノをユーザーに供給して装着を薦めるなんてことに、俺は疑問を持ってしまう。
うちのパーツはすべて、我々がこだわり、性能に対して充分な吟味をし、テスト、開発を経てリリースしたモノ。ハルク・プロのブランドが付いたパーツに対しては、それだけの自信と誇りを持っている。それは、少しの時間でも使ってもらうことができれば分かってもらえるはず。是非、一つ一つのパーツの中に込めたこだわり、思いを実感してもらいたいな。